クリスマスイブと第1次石油ショック

クリスマスツリー

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「ネオン点灯」の自粛と「売れ残りケーキ」の投げ売り

1973年12月24日午後12時直前に地下鉄丸ノ内線・銀座駅周辺の晴海通りで見た、
ネオンサイン点灯の自粛によって街全体が薄暗がりになっている中で、
(洋菓子屋さんへの来店者数が当日の株価急落の余波で想定以上に少なかったからでしょう)、
売れ残ったクリスマスケーキが投げ売りされていた光景は今も記憶の中に強く残っています。

実は、この日の夜には前々から「さすがにクリスマスイブは家族サービスで、会社の上司は残業時間を圧縮して早く帰宅するだろうし、お客様から『打ち合わせ会』への出席呼びかけもないだろう」という想定の下で、
西銀座にあった(今は一般的ですが当時は少数派だった)フランスの家庭料理を提供する静かなレストランで、
大学生のときにタスクフォース的に作られたサークルで一緒だった三菱総研社員とアラビア石油社員との夕食会がセットされていました。

この夕食会は、当時の私は第2次田中角栄第1次改造内閣の国務大臣・総理府総務長官の事務所スタッフという位置づけでしたので、
(すでに10月末から11月初めにかけてトイレットペーパーや洗剤の買い占め騒動などが起き、11月16日の閣議では「石油緊急対策要綱」が決定されていましたけれども)、
「10月中旬にOPEC(石油輸出国機構)加盟産油国の一部が発表した『原油価格の一方的な引き上げ』とOAPEC(アラブ石油輸出機構)加盟産油国が発表した『イスラエル支持国への石油禁輸あるいは供給制限』が日本の産業・経済・社会に与える影響」について3人だけの意見交換会を一度やっておこう、ということでセットされたものでした。




前日に「原油価格2倍」が「原油価格4倍」へ急変

ところが、「原油価格は1バレル当たり2~3ドルが5ドルになる」「日本が『石油禁輸あるいは供給制限』の対象国に含まれる可能性が依然残っている」というだけでも国難レベルの大変な事態なのに、
11月23日にOPEC(石油輸出国機構)加盟産油国の一部は「9日後の来年1月1日から『原油価格を1バレル当たり5ドルから約12ドルに引き上げる』と決定した」と発表し、翌24日(月曜日)の東京証券取引所での株式取引価格は大きく下落しました。

また、アラビア石油社内も激震に揺さぶられたことで、(「無理に来なくてもいいですよ」とは伝えたのですが)、アラビア石油社員の夕食会場到着時間は夜10時なってしまいました。その後、目にしたのが、冒頭の光景ということになります。




当日にはイメージを持てなかった「その後の大不況」

この「第1次石油ショック」の突発時期と影響の大きさを予測していた方は(東日本大震災の発災予測と同じように)ごくわずかしかいらっしゃらなかったと思いますが、
日本では1971年8月15日に発生したいわゆる「ニクソン・ショック」で「1ドル=360円」の固定為替レートが同年12月に「1ドル=308円」に変わり、「円高の進行よる輸出不振」が心配されることなどによって総需要拡大政策が継続され、結果、物価と地価の急上昇が始まっていました。

そして、そういった経済状況を是正するために1973年1月から政府が様々な物価安定対策をとっている最中に「第1次石油ショック」が突発し、
政府は追加するかたちで総需要抑制の政策を政界・官界・財界・労働界などの皆さんの協力を得て実施しますが、
原油価格の高騰は物価を押し上げ、物価の押し上げは人々の実質賃金の減少につながり、
日本経済は第2次世界大戦後初めてマイナス成長を記録するほどの大不況に突入していきました。

1971年から72年にかけて新潟県の化学工場(従業員数1,600人)にいた私は、数十人単位でする工場内敷地の不況対策草刈り作業や、通産省が認めた不況カルテルで他社工場が封印された製造装置を隠密裏に稼働させていないことを確認しに訪問するインスペクターを体験していますので、
その翌年の「物価と地価の急上昇」と「第1次石油ショック」の突発については今でも違う世界での出来事であったように思えてなりません。

一方で、まぎれもない国難に直面した時に、恩讐を超えて大蔵大臣の職を受けた福田赳夫さん、「総理府総務長官には『第2官房長官』として物価抑制対策もやってもらうので平時の総務長官業務の一部をやって欲しい」と言われて異例の3度目の政務次官(=総務副長官)を受けられた小渕恵三さん、自民党政治を評価しないのに汗をかいてくださった労働界や民間人の方々などについては、ご奮闘ぶりを垣間見たことで、「究極の社会貢献の実践者」と今でも高く評価させていただいているところです。

「国難=少子高齢化対応+北朝鮮情勢対応」と絞り込んで政権を運営していったら想定外の事態が発生して国民生活に深刻なダメージを与えることになるのではないか、と強く心配しています。

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